トラネキサム酸の作用のしくみ

微笑む女性

「肝斑」の特徴は、目の周りを避けるようにほぼ左右対称に現れる淡褐色の広範なシミです。
その原因と言われているのが、紫外線や精神的なストレス、ホルモンバランスの崩れです。
また、洗顔時の擦り過ぎやマッサージによる過度なケアなど、物理的な刺激により悪化する可能性もあります。

シミは紫外線や女性ホルモンなど皮膚の内外で起る刺激によるダメージを緩和し、病気を防ぐためのメラノサイト(色素細胞)がメラニンを過剰につくり、それが沈着することでできます。
バリア機能が低下した肌はシミができやすく、特にほお骨の高いところなどにできやすいと言われています。

トランシーノはトラネキサム酸を主成分とし、ターンオーバーを正常化するとされるL-システイン、抗酸化作用をもつビタミンCが配合されたOTC医薬品(一般用医薬品)です。
「肝斑」を改善する目的に開発された「トランシーノ錠」。その成分や美白効果とはどのようなものなのでしょうか。

トラネキサム酸についての紹介

「トラネキサム酸(Tranexamicacid)」は、1981年から発売されている「トランサミン」という薬のジェネリック医薬品(後発医薬品)です。
ジェネリック医薬品とは、先発品(トランサミン)の特許が切れた後に他社から発売された同じ成分からなる薬の事です。
開発・研究費がかかっていない分だけ、薬価が安くなっているというメリットがあります。
またジェネリック医薬品が発売される時期には、先発医薬品の発売から10年以上が経過していることが一般的であり、十分な副作用情報が蓄積されている点が安全性に寄与しています。

トラネキサム酸は人工合成されたアミノ酸で、抗プラスミン作用を持ち、止血剤・抗炎症剤として出血の予防・治療に用いられています。
止血剤として分娩後出血、外科手術で投与される他、その抗炎症作用から扁桃腺炎・喉頭炎による咽頭痛、口内炎による口内痛に用いられることがあります。
一般市販品としては、歯茎の出血・炎症を抑えるとして歯磨剤などにも使われています。
内服薬の場合は苦みが強いため、カプセルや錠剤に加工されることが多いです。

「プラスミン」はプラスミノーゲンの形で血漿中に含まれているセリンプロテアーゼ(タンパク質分解酵素)の一種で、フィブリン(血液凝固に関わるたんぱく質)による血栓を分解する作用があります。
その一方で、プラスミンはメラノサイト(色素細胞)活性化因子の一つと言われています。
さらにプラスミンは炎症を起こすヒスタミンや、痛みの原因となるプロスタグランジン、ブラジキニンも発生させ、同時に血管を拡張させるため患部が腫れて、痛みが発生します。
プロスタグランジンもまたプラスミンと同じようにメラノサイトを活性化させる作用を持ちます。
それではシミ発生の過程を詳しく見てみましょう。

(1)女性ホルモンや紫外線など刺激誘因物質がケラチノサイト(表皮細胞)に働きかけることで、メラノサイト(色素細胞)の活性化因子であるプラスミンやプロスタグランジンが産生されます。
(2)プラスミンやプロスタグランジンが情報伝達物質の役割を果たし、そのシグナルをメラノサイトに伝えます。
(3)メラノサイト内ではチロシン(アミノ酸)にチロシナーゼという酸化酵素が働きかけ、ドーパという化合物に変化。
更にチロシナーゼはドーパにも働きかけ、ドーパキノンという化合物に変化させます。
ドーパキノンは化学的反応性が高いので、酵素の力を借りる事なく次々と反応し、ドーパクロム、インドールキノンへと変化。
最終的には酸化、重合し、黒褐色の真性メラニンとなります。
(4)メラノサイト内でつくられたメラニンが、ケラチノサイトに次々と受け渡され、過剰に蓄積することでシミになります。
このとき、表面に見えるシミだけではなく、ケラチノサイト(表皮細胞)にメラニンが滞留している状態です。

プラスミンの働きをブロックするのがトラネキサム酸です。
この阻害作用によって、メラニンを作り出す前の段階でメラノサイトの活性化を阻害し、肝斑の発生を抑えることができると考えられています。
一方で、トラネキサム酸はプラスミン阻害作用、プラスミノーゲンのプラスミン変換の阻害以外には作用しません。
そのため、プラスミン以外のセリンプロテアーゼを阻害することはないのです。例えば膵液に含まれる消化酵素トリプシンなどです。

トラネキサム酸は副作用が少なく安全性が高いのも特徴です。
全く生じないわけではありませんが、その頻度は少なく、また重篤な副作用もほとんど生じません。
肝斑の原因としてホルモンバランスの乱れなども挙げられていますが、女性ホルモンの分泌などトラネキサム酸によるホルモンに対する直接的な影響は認められていません。
これらの理由から、もし、肝斑でない人がトラネキサム酸含有の薬剤を服用しても危険はないと考えられています。

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